マレーシア・クアラルンプールの会計事務所IYOUから、月に一度、当事務所の会計士・海外移住コンサルタントが厳選した海外の情報をお届けします。11月号は、10月9日に発表された2027年予算案(Budget 2027)から、デジタルノマドパスの延長、駐在員のご家族の就労、個人所得税の本人控除と税率の見直しまで。11月の祝日や、ジョホールバルとシンガポールを結ぶ鉄道の開業目標もあわせて、現地からお伝えします。
ノマドパスの「2年で終わり」が変わるかもしれません。上限に達した保有者に「さらに2年」の追加(計算上は通算4年)——条件・開始日・新規申請者の扱いはこれから

10月9日にアンワル首相(財務相を兼任)が国会で行った予算演説で、デジタルノマド向けの滞在パス「DE Rantau」の延長が示されました。2年の上限に達した既存の保有者に、条件つきで2年の追加を認めるというもので、マレー語版・英語版の演説とも「2年の追加」と明記しています(予算演説 マレー語版)。いまの上限は通算24か月なので、追加の2年が認められれば、計算上は通算で最大4年、マレーシアに滞在してリモートで働けることになります。デジタル省も10月11日の声明で同じ内容を説明しました(Bernama、2026年10月11日)。
民間のアドバイザリー会社Rumaviの「Global Relocation Index 2026」では、マレーシアはデジタルノマドの行き先として世界1位、退職後の移住先としても1位に選ばれました(総合は3位)。物価の手頃さと国外所得の税の扱いが評価された一方、法の支配や路上の安全は懸念点として挙げられています(The Star、2026年9月9日)。アンワル首相も予算演説でこの順位に触れました。国外所得の非課税の期限については、10月号で詳しくお伝えしています。
いまのルールと、まだ決まっていないこと
現行のDE Rantauは、3〜12か月の滞在が認められ、12か月の更新が1回まで、通算で最長24か月です。所得の要件は、IT・デジタル分野の職種で年2万4,000米ドル(約378万円)以上、それ以外の職種で年6万米ドル(約946万円)以上。申請できるのはイスラエル国籍を除くすべての国籍の18歳を超える方で、配偶者、18歳未満の子ども、障がいのある子ども(年齢制限なし)、本人の親を帯同できます。ただし、配偶者はこのパスでは働けません。マレーシアへの出入国は何度でも可能です。更新の申請は失効の3か月前からでき、審査に6〜8週間、その後の電子パスの発行に1週間ほどかかります(MDEC「DE Rantau Pass FAQ」、2026年8月28日版)。
追加の2年の条件、いつから申請できるか、手続きと手数料は、2026年10月23日時点で発表されていません。「通算で最大4年」は、追加の2年が認められた場合の計算上の上限で、政府が「4年に延長」と発表したわけではありません。対象は「2年の上限に達した既存の保有者」です。これから新しく申請する方が、将来この追加の対象になるかどうかも、まだ発表されていません。満了が近い方は、現在の失効日を前提に準備を進めるのが安全です。
2年のあとも住み続けたい方の選択肢
追加の2年は、条件しだいで使えない場合もあります。ノマドパスの期限のあともマレーシアで暮らしたい場合は、ほかの道も並べて考えておくと安心です。たとえば、MM2Hのような長期滞在ビザを申請する、マレーシア本土やラブアンに自分の会社をつくり、就労のための許可を申請する、といった道があります。ただし、どの道にも審査があり、資産・収入・事業の実体などの要件を満たす必要があります。滞在中に働けるかどうか、ノマドパスの期限との間をどうつなぐかも、ビザごとに異なります。どれが合うかは、収入の得方(雇われているのか、自分で事業をしているのか)、家族構成、資産の状況によって変わります。
IYOUでは、ノマドパスのあとのビザ選びや、ラブアン法人の設立を含めたご相談をお受けしています。満了の時期が見えてきた方、これからノマドパスで移住を考えている方は、無料のオンライン個別相談もご利用ください。
帯同する配偶者も、マレーシアで働ける方向へ。本土のEPカテゴリーIの家庭を対象に、2027年1月からの方針

同じ予算演説では、駐在員の家族に関わる方針も示されました。2027年1月1日から、マレーシア本土で働くための就労パス(EP)のうちカテゴリーIを持つ駐在員の配偶者で、扶養家族パス(DP)を持つ人が、定められた条件のもとでマレーシアで働けるようにする、という趣旨です(予算演説、第143段)。
ご夫婦の一方が駐在員として赴任し、もう一方が帯同する家庭では、帯同する側が現地で働く道が広がる可能性があります。ただし、「定められた条件」の中身と申請の手続きは、2026年10月23日時点でまだ発表されていません。
就労パスの3つの区分と、今回の対象
就労パスは給与の水準で3つのカテゴリーに分かれています。2026年6月1日に施行された新しい基準では、カテゴリーIは基本給が月2万リンギ(約77万円)以上(それまでは1万リンギ以上)、カテゴリーIIは1万〜1万9,999リンギ、カテゴリーIIIは5,000〜9,999リンギです。カテゴリーIのEPは、最長10年の期間が認められます。同じ6月の改定で、カテゴリーIIIも2026年6月1日以降の申請から、扶養家族の帯同を申請できるようになりました。一方、カテゴリーIIとIIIでは、2027年1月1日から後継者計画(サクセッション・プラン)の提出が必須になります(入国管理局ESD「Revised Expatriate Salary Policy」)。配偶者の就労についての今回の方針は、カテゴリーIだけが対象で、IIとIIIの配偶者には触れられていません。
ご家族の就労を前提に赴任や帯同の計画を立てる場合は、条件が発表されるまで確定した前提として扱わないほうが安全です。
ご家族での移住を考えるときのポイント
扶養家族パス(DP)は、EPを持つ人の配偶者、18歳未満の子ども、養子が申請できます(入国管理局ESD「Dependant Pass」)。今回の方針が実施されれば、カテゴリーIのEPを持つ方の家庭では、DPを持つ配偶者がマレーシアで働けるようになります。ただし、どのような手続きで働けるようになるのか(DPのままか、別の許可が要るのか)は、まだ発表されていません。
マレーシア本土にご自身で会社を設立して移る場合も、EPのカテゴリーは基本給の水準で決まるため、会社から受け取る基本給の水準が、ご家族の就労の可否にも関わる可能性があります。給与の水準は個人所得税や会社の負担にも影響するので、あわせて検討が必要です。なお、今回の話は入国管理局(ESD)が扱うマレーシア本土のEPが対象です。ラブアン法人で働く場合の就労許可(Labuan Work Permit)は別の制度で、今回の配偶者の就労の方針の対象としては示されていません。「定められた条件」の中身によっては、対象や手続きが変わる可能性もあります。
今月の小ネタ:11月8日はディーパバリ、KLは9日(月)が振替休日

今年のディーパバリは11月8日(日)です。ヒンドゥー教のお祭りで「光の祭り」とも呼ばれ、クアラルンプールではブリックフィールズ(リトル・インディア)周辺が飾り付けでにぎわいます。首相府の祝日表では、サラワク州を除く全国で祝日です(首相府「2026年 連邦祝日表」)。
祝日が日曜日に重なるため、クアラルンプールでは翌9日(月)が振替休日となり、銀行や役所も休みになります(マレーシア中央銀行)。週末が金・土曜日の州など、振替休日の扱いは州によって異なります。11月上旬に銀行や役所での手続きを予定している方は、日程にご注意ください。
「減税」のはずが、所得の大きい方は増税に?本人控除は9,000→1万2,000リンギへ、100万リンギ超の部分は30%に(提案)

2027年予算案の個人所得税では、税務上の居住者が差し引ける本人控除を9,000リンギ(約35万円)から1万2,000リンギ(約46万円)へ引き上げることが提案されています。財務省の資料によると、この控除額が見直されるのは2010年以来です(財務省「Budget 2027 Tax Measures」)。
あわせて、税率表の組み替えも提案されています。課税所得7万超〜10万リンギの税率を19%から18%へ下げ、10万超〜15万リンギには24%の区分を新しく設ける案です。一方で、最高税率30%がかかる範囲は、いまの「200万リンギ超」から「100万リンギ超」に広がる案です。
| 課税所得 | 現行 | 提案 |
|---|---|---|
| 7万超〜10万 | 19% | 18% |
| 10万超〜15万 | 25% | 24% |
| 15万超〜40万 | 25% | 25% |
| 40万超〜60万 | 26% | 26% |
| 60万超〜100万 | 28% | 28% |
| 100万超〜200万 | 28% | 30% |
| 200万超 | 30% | 30% |
単位はリンギです。7万リンギ以下の区分(0〜11%)は変わりません。表は財務省の資料(Appendix 1)から、変更のある区分を中心に抜き出したものです。
中間層は負担が下がり、所得の大きい方は上がる場合も
政府は、控除の引き上げと税率の引き下げで「約500万人の納税者の手取りが最大1,600リンギ(約6万2,000円)増える」と試算しています(予算演説)。ただし、課税所得が100万リンギを超える部分は税率が28%から30%に上がるため、所得の大きい方は差し引きで負担が増える場合があります。「減税」とひとくくりにされがちな点なので、ご自身の所得の水準で確かめておくのが安心です。
控除の対象を広げる案もあります。医療費の控除に産後ケアを加えるほか、両親・祖父母の介護費は医療以外の費用も対象にし、ライフスタイル控除にはAIソフトやアプリのサブスクリプション、ペットのワクチン代なども含める提案です。
対象は「税務上の居住者」の方
この税率表は、マレーシアの税務上の居住者に適用されるものです。居住者かどうかは国籍ではなく滞在日数で決まり、基本は1暦年に182日以上の滞在です。外国籍の方でも居住者であれば今回の見直しの対象になります。一方、非居住者は給与などの所得に一律30%がかかり、本人控除も使えません。この扱いに変更の提案はありません(内国歳入庁「Tax Treatment of Residents and Non-Residents」)。なお、MM2Hなどの滞在ビザを持っていることと、税務上の居住者であることは別の話です。
成立すれば、対象になるのは2027年分の所得から(申告は2028年)です。予算案の税制は、財政法案が国会で可決され、官報で公布されてはじめて確定します。2026年10月23日時点で、財政法案はまだ国会に提出されていません(マレーシア国会 法案一覧)。昨年の予算に対応する財政法は、2025年12月末に公布されています。
ジョホールバル〜シンガポールが駅間約5分に。RTS Linkの開業は「2027年2月目標」、運賃はまだ発表されていません

ジョホールバルのブキッチャガー駅とシンガポールのウッドランズ・ノース駅を結ぶ鉄道「RTS Link」について、マレーシア運輸省とシンガポール陸上交通庁(LTA)は10月2日、旅客営業の開始は2027年2月を目標にすると共同で発表しました。それまでの目標は2027年1月で(The Star、2026年8月18日)、約1か月の後ろ倒しです。開業は、運営会社が独立した安全認証を取り、最終的な許可を得ることが前提とされています(LTA 共同発表、2026年10月2日)。
出入国の手続きは、出発する駅で両国分をまとめて
RTS Linkでは、乗る前に出発駅で両国の出国・入国の手続きを済ませる方式がとられます(シンガポール内務省)。駅間の所要時間は約5分(Bernama、2026年10月2日)、ピーク時には片方向で1時間あたり最大1万人を運べる計画です。
運賃と具体的な開業日は、両国が共同で発表することになっています。ローク運輸相は10月20日、運賃は年内に発表される見込みだと述べました(Bernama、2026年10月20日)。2026年10月23日時点で、インターネット上で見かける運賃の金額は、公式に発表されたものではありません。
読者のみなさまへ
マレーシア移住や法人設立について、個別に相談したいことがある方には、無料のオンライン個別相談(Zoom・1時間・お一人さま1回)をご用意しています。
マレーシア移住や海外での資産管理を考える方に向けて、無料の特典をご用意しています。まだ受け取っていない方は、ぜひチェックしてみてください。
- マレーシア移住ロードマップ(あすか税理士法人監修)
- 非居住者チェックリスト(あすか税理士法人監修)
- 移住前税務対策チェックリスト
受け取り方法:LINE公式アカウント「マレーシアなんでも相談室」を友だち追加し、メニューの「特典」からお受け取りください(特典配布用のLINEアカウントをご案内します)。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。「こんなテーマを読み解いてほしい」というリクエストも歓迎です。
※本ニュースレターは情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の勧誘や投資助言、個別の税務助言を行うものではありません。IYOU ACCOUNTING ADVISORY PLTはマレーシアの会計事務所であり、日本の税理士業務は行っていません。日本側の税務は、提携する国際税務に詳しい税理士と連携してサポートしています。本レターの情報に基づくご判断の結果について、当事務所は責任を負いかねます。制度・数字は執筆時点(2026年10月)の情報であり、今後変更される可能性があります。リンギの円換算は、マレーシア中央銀行(BNM)公表の2026年10月22日正午の中値(1リンギ=38.6円)で計算しており(米ドルは同日の中値から1米ドル=約157.7円で換算)、両替店や銀行の実際のレートとは差があります。
出典
- 財務省「Budget 2027 Tax Measures」(2026年10月9日)
- 財務省「Budget 2027 予算演説(英語版)」(2026年10月9日)
- 財務省「Ucapan Bajet 2027(マレー語版)」(2026年10月9日)
- マレーシア国会「Bills – Dewan Rakyat」(2026年10月23日確認)
- 内国歳入庁(HASiL)「Tax Treatment of Residents and Non-Residents」(2025年版)
- 入国管理局ESD「Revised Expatriate Salary Policy」
- 入国管理局ESD「Dependant Pass」
- The Star「M’sia ranks best in the world for digital nomads in global index」(2026年9月9日)
- Bernama(DE Rantauの2年追加に関するデジタル省の声明の報道)(2026年10月11日)
- MDEC「DE Rantau Pass FAQ v10.0」(2026年8月28日)
- LTA「RTS Link Service Commencement Targeted for February 2027」(2026年10月2日)
- The Star(RTS Linkの運賃と開業日は両国が共同で発表するとのローク運輸相の発言)(2026年8月18日)
- Bernama(RTS Linkの旅客営業開始目標と所要時間の報道)(2026年10月2日)
- シンガポール内務省「Cross-Border Railways (Border Control Co-location) Bill」第二読会(2026年5月5日)
- Bernama「30 Pct Discount On ECRL Economy-class Tickets For First Month Of Operations」(2026年10月20日・RTS Linkの運賃に関するローク運輸相の発言を含む)
- 首相府「Jadual Hari Kelepasan Am Persekutuan 2026」
- マレーシア中央銀行「Upcoming Events」
