マレーシア・クアラルンプールの会計事務所IYOUから、月に一度、当事務所の会計士・海外移住コンサルタントが厳選した海外の情報をお届けします。10月号は、「2026年で終わる」と誤解されがちな国外所得の非課税の本当の期限から、9月の給与明細で確定した新しい控除、中国からの問い合わせが増えるマレーシアの住宅と外国人が買える最低価格、MM2Hと学生パスで押さえておきたいルールまで。現地からお届けします。
海外からの所得がある方は必見。「国外所得の非課税は2026年で終わる」は古い情報——2036年末まで延長済みです

「マレーシアに住む個人が海外から受け取る所得は非課税。ただし2026年12月31日まで」。この説明を、いまも見かけます。前半は条件付きで正しいのですが、後半の期限は古い情報です。もともとの免除令は2022年1月1日から2026年12月31日までを対象としていましたが、2024年10月18日の予算演説で10年延ばす方針が発表され、同年12月に官報公布された改正令で期限は2036年12月31日まで延長されています(The Edge Malaysia、2024年10月18日)。
期限を間違えた記事がいまも目に入るのは、当初の免除令の「2026年」だけを見て書かれたものが検索上位に残っているためと考えられます。内国歳入庁の個人向けページも、免除令そのものを前面には出していません。
「住めば無税」ではない。条件は4つ
非課税になるのは、次の条件をすべて満たす場合です。マレーシアの税務上の居住者であること(滞在日数で判定され、ビザの種類とは別に判定されます)、対象はマレーシアに持ち込んだ(受け取った)国外の所得であること、その所得が源泉国で所得税と同種の税の課税対象であったこと、マレーシアのパートナーシップ事業を通じて受け取った所得ではないこと。この4つです(EY Malaysia Tax Alert)。
つまり、源泉国で課税の対象となる所得をマレーシアに送金して受け取る場合に、マレーシア側では非課税になる余地がある、という制度です。日本側でどう課税されるか(日本の非居住者になるかどうか、源泉徴収の扱い)は別の問題で、そちらは提携する国際税務に詳しい税理士と連携して確認する領域です。
法人の免除とは期限も条件も違う
混同しやすいのが法人側です。法人が海外から受け取る配当や資産の売却益の免除は、当初はやはり2026年12月31日までで、2025年10月の予算で2030年12月31日までの延長が発表されています。ただし法人側には「源泉国の最高税率が15%以上」や経済実体の要件があり、個人の免除とは別の制度です(BDO)。
免除令はこれまでも改正を重ねており、政府の判断で今後変わる可能性があります。「2036年まで安心」と決めてかかるのではなく、年に一度は最新の免除令を確認する前提でお考えください。
マレーシアで雇われて働く方は要注意。9月の給与明細に載る「0.75%・上限44.65リンギ」の正体

6月分の給与から、明細に見慣れない控除が載っているかもしれません。9月の給与で、その扱いが確定しました。社会保障機構(SOCSO/PERKESO)の新制度「LINDUNG 24 Jam(24時間保護)」の保険料です。勤務中や通勤中の事故を対象にしてきた従来の労災保険に対して、勤務時間外の私的な時間に起きた事故も24時間カバーする制度で、2026年6月1日に始まりました(PERKESO公式ページ)。
保険料は全額が従業員負担で、この保険料に雇用主の負担はありません。料率は3段階で上がり、2028年5月までは賃金の0.75%、2028年6月から1.0%、2031年6月から1.25%です。対象となる賃金には6,000リンギの上限があり、拠出表に基づく本人負担の上限は月44.65リンギ(約1,730円)です(PERKESO拠出表)。
外国人は強制、マレーシア人は任意
制度は当初、全員加入でしたが、7月8日の閣議でマレーシア人は任意、外国人労働者は引き続き強制と決まりました。マレーシア人従業員は7月13日から8月31日までに不参加の宣誓を出せば不参加を選ぶことができ、出さなかった人は自動的に参加扱いになりました。6月分の保険料は返金されません(PERKESO FAQ 第2.0版)。
そのため、9月の給与が節目になります。8月末で選択の期限が切れ、9月の給与は「不参加を選ばなかった人の控除が確定した最初の給与」です。雇用パス(EP)で働く日本人の駐在員や現地採用の方は外国人労働者にあたるため、選択の余地はなく、6月分から控除が続いています。
PERKESOは制度開始から1か月で約200万リンギ(約7,760万円)、1日平均27件の給付を行ったと発表しています(2026年7月10日)。なお、会社から給与を受け取っていない取締役や自営の方は、この制度とは別の枠組みになります。
KL・セランゴールで住まいの購入を考えている方は必見。中国からの問い合わせが10年で最高、外国人が買える最低価格はKL100万・セランゴール主要地区200万リンギ

マレーシアの住宅に対する中国からの問い合わせが、この10年で最も高い水準にあります。不動産仲介大手Juwai IQIの集計では、2026年上半期に中国人が海外の住宅について問い合わせた先のうち、マレーシアの割合は7.3%。2024年の2.8%、2025年の4.5%から伸び、タイ、オーストラリア、英国に次ぐ4位でした。同社は中国人による年間の購入額を16億リンギ(約620億円)超と推計しています(BusinessToday、2026年9月1日)。
同社によると、買い手の中心は投資目的から、実際に住む駐在員とその家族へ移っており、人気はモントキアラ、デサパークシティ、ペナンだといいます。このうちモントキアラとデサパークシティは、日本人の駐在員家族も多く住む地区です。
MM2Hの申請でも、中国が約半数
長期滞在ビザMM2Hの統計も同じ方向を示しています。2024年10月から2026年8月までの新規申請7,650件のうち、中国が3,847件(50.3%)、次いで台湾1,054件、香港324件でした。この期間の経済効果は88.5億リンギ(約3,430億円)で、内訳は不動産購入が50億リンギ超、定期預金が38.2億リンギです。観光芸術文化副大臣は、MM2Hの窓口が今後、香港・日本・韓国でセールス活動を行う予定だと説明しています(Bernama、2026年9月26日)。
外国人が買える「最低価格」は州で違う
外国人がマレーシアで住宅を買うには、州ごとに定められた最低価格以上の物件を選び、州の同意を得る必要があります。連邦ガイドラインの下限は1戸100万リンギ(約3,880万円)で(経済省ガイドライン、2022年7月13日施行)、クアラルンプールは100万リンギ、セランゴール州はゾーン制で、ペタリン、ゴンバック、フル・ランガット、セパン、クラン、クアラ・セランゴール、クアラ・ランガットは200万リンギ(約7,760万円)、フル・セランゴールとサバ・ベルナムは100万リンギです。いずれも分譲マンションなどの区分所有物件に限られます(セランゴール州土地鉱物局 通達1/2014、セランゴール州議会の回答)。ペナンやジョホールなど他の州は、額も条件も州ごとに異なります。
モントキアラやデサパークシティはKL側で下限100万リンギ、隣接するペタリンジャヤやスバンジャヤはセランゴール側で200万リンギ。同じ生活圏でも境界をまたぐと下限が2倍になります。需要が高まっている地区ほど、この線引きを先に知っておくと物件探しの無駄が減ります。
今月の小ネタ:KLP48が2周年、「大声ダイヤモンド」をマレー語で

AKB48の海外姉妹グループKLP48が、2026年8月14日から16日にかけて、ブキビンタンのLaLaport内にある専用劇場で2周年公演を行いました。7枚目のシングルとして、AKB48の「大声ダイヤモンド」のマレー語版「Jeritan Permata Intan」を初披露しました(KLP48公式X、2026年8月)。3日間で約1,000人が来場したと報じられています(MTown、2026年8月28日)。
日本語のまま持ち込むのではなく、現地の言葉に移して根づかせる。日本のコンテンツがマレーシアで受け入れられる形のひとつです。
MM2HのGoldやSilverで滞在中の方は要注意。観光相が「Platinum以外の就労・事業」の取り締まり強化を指示

2026年9月22日、ティオン・キンシン観光芸術文化相はMM2Hに関する会議で、許可を得ずに事業を行っている参加者への取り締まりを強化するよう指示しました(Free Malaysia Today、2026年9月22日)。
いまのルールで認められている範囲
現行のMM2Hでは、就労・投資・事業が認められているのはPlatinumだけで、GoldやSilver、経済特区枠の参加者が働いたり事業を営んだりするには、別途その活動のためのパスが必要です。今回の指示は新しいルールの発表ではなく、いまあるルールを厳しく運用するという方針表明です。制度そのものの変更は、公式サイトにも9月30日時点で告知されていません。
MM2Hで滞在しながらマレーシアで事業を始めたい方は、MM2Hとは別に事業用のパスや法人の枠組みが必要です。「ビザがあるから何をしてもよい」ではない点を、改めてご確認ください。
ご本人やお子さんが学生パスで滞在中の方は要注意。大学・カレッジの更新は「出席率80%・CGPA2.0」が公式要件

マレーシアの大学やカレッジに学生パスで通う方の学生パスの更新には、成績と出席の条件があります。留学生の窓口であるEMGSの公式案内には、更新にはCGPA(成績平均)2.0以上と、出席率80%以上が必要で、どちらかを満たさない場合は学校が説明レターを提出しなければならない、と書かれています(EMGS「Required Documents」)。出席率が下がると、学業の問題にとどまらず滞在資格の問題になる、という点が見落とされがちです。
この要件はEMGSを通じて申請する高等教育機関の学生パスに関するものです。インターナショナルスクールに通うお子さんの学生パスは学校レベルの区分で、更新の条件は学校ごとに確認が必要です。
保護者として付き添う場合のルール
入国管理局の案内では、学生パスは3歳以上が対象で、保護者(Guardian)として一緒に滞在できるのは学校レベル(政府校・教育省認可のインターナショナルスクール・私立校)に通う子どもの場合だけです。認められる保護者は実の父母、法定後見人、養父母、祖父母に限られ(それ以外の類型は入国管理局の案内をご確認ください)、保護者パスでの就労はできません。大学に通う学生が配偶者や子どもを同伴できるのは修士・博士課程に限られます。学生本人のアルバイトは、入国管理局への申請と許可を得たうえで、週20時間まで、レストラン・ガソリンスタンド・ミニマーケット・ホテル・大学やカレッジの構内に限って認められます。語学センターや訓練・技能センターの学生は対象外で、無許可で働くと学生パスが取り消されます(マレーシア入国管理局「Student Pass」)。
手数料は学生パスが60リンギ(約2,300円)、保護者や扶養家族の滞在パスが90リンギ(約3,500円)です。更新の時期が近づく前に、出席率の現状を学校に確認しておくと安心です。
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※本ニュースレターは情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の勧誘や投資助言、個別の税務助言を行うものではありません。IYOU ACCOUNTING ADVISORY PLTはマレーシアの会計事務所であり、日本の税理士業務は行っていません。日本側の税務は、提携する国際税務に詳しい税理士と連携してサポートしています。本レターの情報に基づくご判断の結果について、当事務所は責任を負いかねます。制度・数字は執筆時点(2026年9月)の情報であり、今後変更される可能性があります。リンギの円換算は、マレーシア中央銀行(BNM)公表の2026年9月25日正午の中値(1リンギ=38.8円)で計算しており、両替店や銀行の実際のレートとは差があります。
出典
- The Edge Malaysia「Budget 2025: Tax exemption on foreign-sourced income for individuals extended to 2036」(2024年10月18日)
- EY Malaysia「Foreign-sourced income (FSI) exemption orders gazetted」
- BDO「Malaysia: 2026 Budget measures affecting businesses」(2025年10月)
- PERKESO「Skim Kemalangan Bukan Bencana Kerja (LINDUNG 24 Jam)」
- PERKESO「FAQ LINDUNG 24 Jam Ver2.0」(2026年7月)
- PERKESO「New Contribution Rate Including SKBBK」
- BusinessToday「Chinese Demand For Malaysian Homes Hits Decade High」(2026年9月1日)
- Bernama「MM2H統計(観光芸術文化副大臣の発言)」(2026年9月26日)
- セランゴール州議会「Pemilikan Hartanah oleh Warga Asing」(PTG Selangor Pekeliling Bil.1/2014)
- Free Malaysia Today「Tiong wants action against MM2H participants abusing programme」(2026年9月22日)
- EMGS「Required Documents」
- マレーシア入国管理局「Student Pass」
- MTown「KLP48 2周年公演」(2026年8月28日)
- 経済省「Guideline on the Acquisition of Properties」(2022年7月13日施行)
