マレーシアのe-Invoiceは、2026年9月1日から年間売上300万MYR(約1.2億円)未満の法人が発行義務を免除されました。ラブアン法人の多くがこれに当たりますが、法人株主や親会社の年間売上が300万MYR以上の場合は免除されません。この記事では、免除の条件と、対象になる場合の実務をまとめます。
※本記事は2025年11月に公開し、2026年9月9日に免除しきい値の改定(100万MYR→300万MYR)を反映して、下記の「導入スケジュール」「まとめ」などを更新しました。
【免除されない場合があります】
年間売上が300万MYR未満でも、次のいずれかに当たる場合は免除の対象外となり、e-Invoiceの発行が必要です。
・法人株主(個人以外の株主)がいて、その株主の年間売上が300万MYR以上である
・親会社の年間売上が300万MYR以上で、その子会社にあたる
・ジョイントベンチャーや関連会社の年間売上が300万MYR以上である
関連会社にあたるかどうかは、発行済株式の20%以上を保有しているか、または実質的な支配関係があるかどうかで判定されます。株主がすべて個人であれば、同じ方が複数の会社を保有していても、関連会社にはあたりません。
日本の親会社(年間売上1.2億円以上)が株主になっているラブアン法人は、この条件で免除の対象外となります。この場合の対応開始日は2026年7月1日で、すでに経過しています。
マレーシアでは、税務コンプライアンスの強化および会計・請求業務のデジタル化を目的としてe-Invoice(電子インボイス)制度の導入が段階的に進められています。
e-Invoiceとは、従来の紙やPDFの請求書とは異なり、請求書データを税務当局(LHDN:マレーシア内国歳入庁)へ電子的に送信し、承認を受ける仕組みです。
すべての売上取引が、LHDNのシステム上でリアルタイムまたは準リアルタイムに把握されることになります。
この制度は、マレーシア本土法人だけでなく、ラブアン法人も対象となります。
e-Invoiceの提出先と基本ルール
e-Invoiceは、LHDNが運営する「MyInvois」ポータルを通じて提出します。
会計ソフト(SQL等)からAPI連携で自動提出する方法、またはポータルへ直接入力する方法があります。
基本ルール(重要)
- 売上請求書(Sales Invoice)
原則として発行前にMyInvoisへ提出し、承認(validation)を受けます。
承認されると、e-Invoice番号およびQRコードが付与され、当該e-Invoiceが正式な請求書として成立します。 - 個別e-Invoice
「発行後◯日以内」といった一律の提出期限は設けられておらず、請求書発行のタイミングで適時に提出・承認を行う必要があります - 月次まとめ(Consolidated e-Invoice)
主にB2Cの小口取引等において認められており、翌月7日以内の提出が必要とされています
※ラブアン法人においては、取引形態上、個別e-Invoiceでの対応が基本となり、Consolidated e-Invoiceの利用は限定的と考えられます。
※本ルールは、マレーシア税務当局(LHDN)のガイドラインに基づき、ラブアン法人・本土法人いずれにも適用されます
e-Invoice導入スケジュール(公式)
e-Invoice制度は、企業規模(年間売上高)に応じて段階的に適用されています。
公式スケジュール(LHDN・JETRO発表)
- 2024年8月1日
年間売上高 1億MYR以上の企業(大企業) - 2025年
年間売上高に応じて中堅企業まで順次拡大 - 2026年1月1日
年間売上高 500万MYR以下の事業者 - 2026年9月1日
年間売上高 300万MYR未満は免除
*弊社のラブアン法人のクライアント様は、多くがこちらに該当します(上記の「免除されない場合」に当たる法人を除きます)
※出典
LHDN(マレーシア内国歳入庁)「e-Invoice Guideline」Version 4.8(2026年8月30日)
LHDN「e-Invoice General FAQs」(2026年9月4日更新)
JETRO マレーシアの電子インボイス制度
※2026年9月9日現在の内容です。免除の範囲は今後見直される場合があります。円換算は目安で、判定は現地通貨(MYR)建ての売上で行われます。
ラブアン法人への影響(重要ポイント)
e-Invoiceの対象となるラブアン法人では、以下に該当する収益についてe-Invoiceの提出義務があります。
<e-Invoiceの提出義務のある収益>
・サービス提供に対する対価(Agency Fee、Advisory Feeなど)
・継続的なビジネス収益
・ラブアン法人のPrincipal Activityに該当する収益
一方で、以下のような収益はe-Invoice提出対象外となるケースがあります。
<e-Invoiceの提出対象外の収益>
・自社資金の投資収益(利息・配当等)
・事業活動に直接該当しないその他収益
(※内容を説明できる証憑が必要)
経費(Expenses Invoice)との違い
e-Invoice制度では、売上と経費で取扱いが異なります。
- 売上(Sales Invoice)
→ 原則として発行前にMyInvoisへ提出し、承認(validation)を受ける必要があります
(承認済みe-Invoiceが正式な請求書として成立します)
- 経費(Expenses Invoice)
→ 仕入先(Supplier)がe-Invoiceを発行するため、自社側に即時提出義務はありません
→ ただし、取引内容によってはSelf-billed e-Invoice(自己請求)が必要となる場合があります
→ 会計・監査・税務申告に向けて、受領したe-Invoiceの管理・整理は必須です
なぜe-Invoice対応が重要なのか
e-Invoiceは単なる請求書のデジタル化ではなく、税務コンプライアンスの中核となる制度です。
対応が不十分な場合、以下のリスクがあります。
- 税務上の未遵守(Non-Compliance)
- 罰金・ペナルティの可能性
- 監査時の指摘
- ラブアン法人における3%税率適用への悪影響
e-Invoiceの対象となる法人にとっては、未対応がそのまま会計・税務リスクにつながります。
ラブアン法人が今から準備すべきこと
免除に該当する場合でも、将来売上が300万MYRに達したときに備えて、以下の準備を進めておくことが重要です。
- 売上請求書の発行フローを明確にする
- e-Invoice提出できる体制を整える
- Bank Statement・請求書の月次整理
- 会計士またはシステムによる代理提出の検討
- 日本人オーナー向けに「誰が・何を・いつやるか」を明確化
まとめ(クライアント向け要点)
2026年9月1日から、年間売上300万MYR未満の法人はe-Invoiceの発行義務が免除されました。弊社のラブアン法人のクライアント様も、多くがこちらに該当します。
ただし、法人株主や親会社の年間売上が300万MYR以上の場合は免除されず、Sales Invoice(売上請求書)をe-Invoiceとして提出する必要があります。ご自身がどちらに当たるかは株主構成で決まりますので、判断に迷う場合はご確認ください。
また、免除に該当する場合でも、請求書の様式を整えて取引記録を月次で残しておくことは変わりません。将来売上が300万MYRに達すると、その翌々年の1月1日から義務化されるためです。
私たちIYOU会計事務所では、E-Invoice対応に万全の体制を整えています。
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