マレーシア・クアラルンプールの会計事務所IYOUから、月に一度、当事務所の会計士・海外移住コンサルタントが厳選した海外の情報をお届けします。9月号は、在住者の定番手続きがぐっと軽くなるパスポートのオンライン申請から、ペナンで始まった民泊の「許可制」、55年ぶりに変わるマレーシアの大学制度まで。現地からお届けします。
在住者に朗報。パスポート更新の申請が海外からオンラインで——戸籍謄本も原則不要に

海外在住の日本人にとって、地味に負担の大きい手続きのひとつがパスポートの更新でした。それが2026年8月25日から、大きく変わりました。「国外転出者向けマイナンバーカード」を持っている方は、マイナポータルからパスポートのオンライン申請ができるようになりました(在マレーシア日本国大使館)。あわせて、従来の「マイナポータルアプリ」を刷新した新アプリ「マイナアプリ」(8月25日提供開始)を、スマートフォンに入れておく必要があります。すでに旧アプリをお使いの方は、アップデートするとマイナアプリに切り替わります。
戸籍謄本の取り寄せが原則不要に
いちばんのポイントは、戸籍謄本の取り寄せが原則いらなくなったことです。
では戸籍の確認はどうなるのかというと、マイナポータル経由の申請では、戸籍の情報が行政のシステム連携によって自動的に確認されます。つまり、原則として、ご本人が戸籍謄本を用意して提出する作業は無くなりました。結婚などで氏名や本籍地が変わっている場合でも、原則そのままオンラインで申請できます(未成年の代理申請で戸籍が異なる場合など、一部の例外はあります)。これまで日本の家族に取得を頼んだり、一時帰国に合わせて手配したりしていた方には、大きな変化です。
受け取りは窓口——カードがない場合・手数料は?
一方、パスポートの受け取りは従来どおり窓口に出向く必要がありますが、その選択肢は広がりました。在マレーシア日本国大使館などの在外公館での受け取りに加えて、一時帰国中に日本国内の旅券事務所で受け取る申請もできるようになっています。なお、従来のオンライン在留届(ORRネット)経由の申請もこれまでどおり利用できます。国外転出者向けマイナンバーカードをお持ちでない方は、従来の方法での申請になります。
その国外転出者向けマイナンバーカード自体も、2024年5月から国外からオンラインで新規申請できるようになっています(受け取りは在外公館などの窓口。2015年10月5日以降に国外転出した方が対象で、発行までおよそ2カ月、国によってはそれ以上かかります。マレーシアでの受取場所や必要書類は大使館の案内をご確認ください)(マイナンバーカード総合サイト)。パスポートの手数料は、オンライン申請の場合も受け取り時に窓口で支払います(支払い方法は公館ごとに異なります)。
ペナンに不動産をお持ちの方は要注意。民泊が「許可制」に——11月1日から本格取り締まり

「海外にコンドミニアムを買って、使わない期間はAirbnbで貸す」——マレーシアの不動産に興味のある方がよく思い描く形に、規制の波が来ています。ペナン州は8月1日に短期賃貸住宅に関する新しい条例を施行し、事業者に地方自治体の許可の取得を義務付けました。2カ月の猶予期間を経て、11月1日から本格的な取り締まりが始まります。違反した場合は最高2,000リンギの罰金または1年以下の禁錮(あるいはその両方)です(MTown、2026年8月24日)。
短期賃貸への規制は世界の観光都市で強まっている流れで、マレーシアではペナンが先行する形になりました。物件の収支を民泊収入ありきで組み立てる場合、「規制で前提が変わり得る」ことは織り込んでおきたいところです。
許可を取るには——費用と手続き
申請先は、ペナン島側がペナン島市役所(MBPP)、本土側がスブラン・プライ市役所(MBSP)です。現地報道によると、申請手数料は50リンギ、年間ライセンス料は3室まで1,000リンギ(4室目からは1室あたり年200リンギ・最大5室)で、これとは別に年間の施設料1,800リンギがかかります。合計するとおおむね年2,800リンギからの固定費で、毎年の更新が必要です。また、サービスアパートメントなど区分所有の建物では、それぞれの管理機構が定める規約(ハウスルール)に従うことが前提で、規約が短期賃貸を禁じていれば許可の有無にかかわらず営業できません(The Star・Malay Mail、2026年8月21日)。
最大のポイント——島側では「普通のコンド」がそもそも対象外
見落とせないのは、島側(MBPP)では住宅用途の区分所有物件——つまり一般的なコンドミニアム——は許可の対象になっていないことです。島側で対象になり得るのは、商業用途で登記されたサービスアパートメントやSoHo、個別権原の戸建(用途変更の手続きが前提)など。ただし州が指定した禁止区域(ジェセルトン・ハイツ、ミンデン・ハイツなど)では戸建でも営業できず、ジョージタウンの世界遺産地区には別途の制限もあります。一方、本土側(MBSP)はアパートやコンドミニアムなど住宅系の物件も対象になり得るとされ、同じペナン州でも島と本土でルールが大きく異なります。なお、低・中低コスト住宅や公営住宅(PPR)のほか、政府所有物件や労働者宿舎、医療・保育施設なども全域で対象外です。
では、許可を取れば「これまで通り」の運用ができる?
対象となる物件で許可を取り、建物の規約もクリアしていれば、営業日数の上限のような制限は現時点の報道では示されていません(部屋数はライセンス上最大5室)。ただし、島側の住宅コンドミニアムはそもそも許可の入口がなく、本土側(MBSP)も適用の細かい基準を現在見直し中とされるため、今後の発表で条件が変わり得ます。これまで市当局には短期賃貸を直接取り締まる法的手段がなく、今回罰則付きの条例という形で法的根拠が整った、というのが変化の正体です。必要書類や安全要件の詳細は、各市役所の発表をご確認ください。
ペナンで物件を短期賃貸に出している方、これから購入を検討している方は、11月1日より前に許可の要否をご確認ください。
マレーシアの大学制度が55年ぶりの転換点へ——教育移住を考える方が知っておきたい動き

お子さんの教育を軸にマレーシアを考える方に、知っておいてほしい動きがありました。アンワル首相は8月15日、1971年から55年間続いてきた大学・大学カレッジ法(UUCA)を廃止する方針を発表しました。その後8月20日には、廃止の法案を年内に国会へ出す方針を首相が改めて表明しています(MTown、2026年8月19日・The Star、2026年8月20日)。
そもそも「UUCA」とは?——新法で何が変わる?
UUCAは、大学の設立を政府の承認制とし、公立大学の運営を国の管理下に置いてきた法律です。とくに知られているのが第15条で、学生の政党への加入や政治活動を長く制限してきました。その後、2012年に政党への加入が解禁され、2019年にはキャンパス内での政治活動が認められ、2024年には学生団体が自分たちで組織や財務を運営する権限が広がるなど、段階的に緩和されてきました。今回は、その「改正」の積み重ねからさらに進んで、法律そのものの廃止に踏み込んだ形です(Malay Mail、2026年8月19日)。
受け皿になるのが、UUCAに代わる新法「One Higher Education Act」です(高等教育省が2026年1月に構想を発表。Malay Mail、2026年8月15日)。高等教育省は、まず独立委員会を設けて検討し、公立・私立大学や学生を含む関係者との協議、法案の起草、大学運営を止めないための移行措置へと進めるとしています。方向性としては大学の自治・学問の自由・学生の発言力を強めつつ、運営の説明責任は保つとされています(The Star、2026年8月20日)。新法の具体的な中身はこれからの協議で決まります(2026年8月時点)。
マレーシアの大学、世界での立ち位置
いまマレーシアの高等教育機関には約16万7,000人の外国人留学生が在籍し、経済効果は年間およそ200億リンギ。政府は高等教育を「輸出産業」と位置づけて誘致を進めています(MTown、2026年8月24日)。大学の国際評価も上がっています。QS世界大学ランキングの2027年版(2026年発表)では、国立の名門マラヤ大学(UM)が過去最高の世界56位に入りました(マラヤ大学)。私立では、テイラーズ大学が世界272位(ホスピタリティ分野は2026年の分野別ランキングで世界トップ30)、サンウェイ大学が世界354位に入っています。豪モナッシュ大学や英ノッティンガム大学もマレーシア校を置いており、親大学の学位課程をマレーシアで学べます。
英語で学べて、学費や生活費が欧米より抑えめ——という従来の魅力に、制度の刷新と大学の評価上昇が重なりつつあります。
今月の小ネタ:マレーシアの国内旅行者が延べ1億人を突破

マレーシア統計局のデータによると、国内を1泊以上で旅行した人の数が、延べで2015年の約6,270万人から2025年には約1億650万人へと、10年で約70%増えました。クアラルンプールを訪れた旅行者も延べ約300万人から約1,000万人へと3倍以上です(The Star、2026年8月)。
統計局の年次調査を細かく見ると、2025年は平均の滞在が2.56泊に伸び、ホテルなど有料の宿泊施設を使う割合も43.8%に上がりました。旅行の目的でいちばん多いのは、帰省や親族・友人への訪問です(マレーシア統計局、2026年6月発表)。
政府が「Visit Malaysia Year 2026」を掲げて観光に力を入れるなか、まず国内の旅行熱が先に盛り上がっている格好です。週末のマラッカやイポー、ペナンが混んでいるのは、外国人観光客だけのせいではなさそうです。
進出企業は要チェック。e-Invoiceの陰で動いた10億リンギ——自主申告5万2,000人の意味

マレーシアで段階導入が進む電子インボイス(e-Invoice)について、興味深い数字が公表されました。2026年8月上旬の全国税務会議で第2財務相が明らかにしたところによると、税務の自主開示プログラムの利用者は5万2,000人を超え、申告された追加税額は10億900万リンギに上るとのことです(MTown、2026年8月)。
「見つかる前に自分から」が数字に表れた
自主開示プログラムとは、過去の申告漏れを自主的に申告した場合にペナルティが減免される制度です。e-Invoiceで取引がリアルタイムに税務当局へ記録されるようになると、過去の申告との食い違いが見えやすくなります。「当局に見つかる前に自分から申告しておこう」という動きが、この数字の背景にあると見られます。
e-Invoiceの本質は請求書の電子化ではなく、税務当局の捕捉力の強化にあること——それが数字にも表れた形です。
いま対象なのは誰?——実務面のポイント
e-Invoiceの対象は、2024年8月の大企業(年商1億リンギ超)から4段階で広がり、2026年1月の最終段階で予定していた全対象企業に行き渡りました。年商100万リンギ未満の事業者は免除です(2025年12月の見直しで免除ラインが引き上げられました)。つまり現在は「年商100万リンギ以上の全事業者が対象」で、現時点で公表されている新たな導入フェーズは残っていません(マレーシア内国歳入庁、2026年8月時点)。
実務面では、この自主開示プログラムは2027年12月31日まで実施されており、期間中は提出済みインボイスの修正・訂正もペナルティなしで認められます(The Edge Malaysia、2026年7月発表)。また、企業がe-Invoice導入にかけた費用を、1年以内に全額差し引ける(資本控除として計上できる)ようにする方針も、同じく2026年7月に示されています(適用の細則は今後の官報等での確認が必要です)。マレーシアで法人をお持ちの方は、ご自身の会社の適用時期と、日々の取引記録を整えておくことがいっそう大切になります。
車を運転する方は要注意。「国際免許の取り直し」では延長できません——12ヶ月ルールの続報

先月号でお伝えした運転免許の「12ヶ月ルール」(長期滞在ビザで暮らす人が国際運転免許証で運転できるのは入国から12ヶ月まで)に、続報があります。在マレーシア日本国大使館が8月時点で掲載している案内で、道路交通局(JPJ)の補足として、日本で新しい国際運転免許証を取得し直しても、最初の入国から12ヶ月を超えてマレーシアで運転を続けることはできないことが明示されました。
「取り直せばリセット」は通用しない
「1年経ったら、いったん帰国して国際免許を取り直せばまた1年運転できるのでは?」——在住者の間でよく聞かれた考え方ですが、これが公式に否定された形です。起点はあくまで「最初の入国」で、国際免許の発行日ではありません。
12ヶ月を過ぎたら現地免許の取得へ
日本の免許をマレーシアの免許に切り替える制度は2025年5月に原則停止されており、いまも利用できるのは外交団やMM2H参加者などの例外に限られます。そのためEPなどの長期滞在者は、12ヶ月を過ぎて運転を続けるなら、マレーシアで学科試験から受け直して免許を取得することになります。流れは、学科試験→仮免許→実技教習(16時間以上)→実技試験、が原則です(ジェトロ)。大使館は、把握している範囲の英語対応の自動車教習所リスト(2026年6月時点)もあわせて案内しています。
1年を過ぎても運転を続ける予定の方は、早めに教習所の検討を始めることをおすすめします。最新の情報は在マレーシア日本国大使館のウェブサイトでご確認ください。
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※本ニュースレターは情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の勧誘や投資助言、個別の税務助言を行うものではありません。IYOU ACCOUNTING ADVISORY PLTはマレーシアの会計事務所であり、日本の税理士業務は行っていません。日本側の税務は、提携する国際税務に詳しい税理士と連携してサポートしています。本レターの情報に基づくご判断の結果について、当事務所は責任を負いかねます。制度・数字は執筆時点(2026年8月)の情報であり、今後変更される可能性があります。
出典
- デジタル庁「マイナアプリ(旧マイナポータルアプリ)の提供開始について」(2026年8月25日提供開始)
- 在マレーシア日本国大使館「マイナポータルからのパスポートのオンライン申請」(2026年8月21日)
- MTown「eインボイス導入で5万2,000人超が自主申告 申告税額は10億リンギ超」(2026年8月5日)
- The Edge Malaysia「Govt announces grace period to amend e-invoices till end-December 2027」(2026年7月7日)
- 在マレーシア日本国大使館「マレーシアにおける外国運転免許証の切り替え停止(続報3)」(2026年8月確認)
- 在マレーシア日本国大使館「英語対応の自動車教習所リスト」(2026年6月時点)
- ジェトロ・ビジネス短信「マレーシア道路交通局、居住外国人が国際免許証で運転可能な期間を明確化」(2026年7月15日)
- The Star「KL, Penang and Putrajaya record biggest rise in local tourists」(2026年8月19日・出典データ=マレーシア統計局)
- MTown「ペナン州、Airbnbなど短期賃貸を許可制に――11月から本格取り締まり」(2026年8月24日)
- MTown「マレーシア、大学・大学カレッジ法を廃止へ――55年続いた大学統制に転換点」(2026年8月19日)
- MTown「外国人留学生16万7,000人、マレーシア経済に年間RM200億の効果」(2026年8月24日)
- The Star「Penang homestay operators need local authority licences as new by-law comes into force」(2026年8月21日)
- Malay Mail「Airbnb crackdown: Penang introduces new licensing laws for short-term rentals」(2026年8月21日)
- Malay Mail「UUCA explained: Malaysia’s 55-year-old campus control law and the repeal now on the table」(2026年8月19日)
- The Star「Independent committee to study new higher education law to replace AUKU」(2026年8月20日)
- マラヤ大学「Universiti Malaya achieves highest-ever global ranking of 56th in QS World University Rankings 2027」(2026年6月)
- テイラーズ大学「QS Rankings」(2026年)
- サンウェイ大学「Accolades and Recognition」(2026年)
- マレーシア内国歳入庁(LHDN)「e-Invoice Implementation Timeline」
- マイナンバーカード総合サイト「国外転出者のマイナンバーカードの手続き」
- マレーシア統計局(DOSM)「Domestic Tourism Survey 2025」(2026年6月16日)
